雪(ゆき)

晩冬の季語 | HitchHaiku 歳時記

解説

雪は冬の季語の王である。月・花と並んで「雪月花」と称され、日本の美意識の三本柱をなしてきた。降る雪、積もる雪、降りやんだあとの雪明かり、解けはじめる雪——同じ雪でも、時間と光によって句の表情はまったく変わる。

雪の句には二つの系譜がある。ひとつは雪を愛でる系譜。「初雪」の心躍り、「雪見」の風流、「雪晴」の眩しさ。もうひとつは雪に耐える系譜。「吹雪」「雪催(ゆきもよい)」「雪空」には、北国の暮らしの重さが宿る。病床の子規が「いくたびも雪の深さを尋ねけり」と詠んだとき、雪は見ることのできない憧れそのものだった。

なお「雪解(ゆきどけ)」「雪崩」「残雪」は春の季語である。一茶の「雪とけて村一ぱいの子どもかな」は、雪国に春が来た瞬間の解放感を詠んで名高い。雪は降るときだけでなく、消えるときにも句になる。

傍題・関連季語

名句選

いくたびも 雪の深さを たづねけり

正岡子規 | 季語:雪(冬) | 根岸・子規庵。病床から庭の雪を何度も尋ねた

誰かある初雪の深さ見て參れ

正岡子規 | 季語:初雪(冬) | 松山・石手寺周辺

初雪やかくれおほせぬ馬の糞

正岡子規 | 季語:初雪(冬) | 松山。雪の白さを裏から写す諧謔

雪とけて 村一ぱいの 子どもかな

小林一茶 | 季語:雪解(春) | 信州。雪国の春の解放感

大木にかくれて雪の地蔵かな

尾崎放哉 | 季語:雪(冬) | 小豆島

雪は晴れたる小供等の声に日が当る

尾崎放哉 | 季語:雪(冬) | 小豆島。自由律

生死の中の雪ふりしきる

種田山頭火 | 季語:雪(冬) | 行乞の旅中。自由律の絶唱

雪へ雪ふるしづけさにをる

種田山頭火 | 季語:雪(冬) | 山口・其中庵

ふるさとはあの山なみの雪のかがやく

種田山頭火 | 季語:雪(冬) | 宝塚から故郷を望んで

この道しかない春の雪ふる

種田山頭火 | 季語:春の雪(春) | 松山。生き方の覚悟を託した一句

詠み方のヒント

雪の句は「白い」「冷たい」を封印するところから始まる。雪はそれ自体が白く冷たいのだから、句が言うべきは別のことである。雪に当たる子どもらの声、隠れそこねた馬糞、雪の向こうの生死。山頭火の「雪へ雪ふる」のように、雪に雪を重ねるだけで静けさは極まる。

HitchHaiku の季節 BGM は雪の日に音を変える。窓の外の雪を見ながら、今日の一句を。

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